院長ブログ

2015.02.15

異物考

年が明けて1か月半で、私はすでに3匹の虫を取り出しています。

「どこから?」って、患者さんの耳の中からです。

”虫”といえば秋の音を思いうかべませんか?実際に虫の季語は秋です。

ただ耳鼻科の診療の世界で”虫”は初夏の季語で、

「耳に虫が入った!って患者さんが来ると夏が来たな~と感じる」と先輩も言ってました。

冬に3匹なんて、地球温暖化の影響でしょうか。

耳だけでなく、鼻、のどと耳鼻科は穴の中を覗く科。穴に迷い込んだ異物達とよく遭遇します。

ナンバーワンはのどに刺さった魚の骨でしょう。ウナギが案外多いですよ。

焼津に赴任していた頃、救急で呼び出されたのは”マグロの背骨を飲み込んだ”患者さんでした。

口から取れず、食道を切って取り出していました。

「焼津ってすごいな。魚の町ってこういうことか」と感心したものでした。

鼻の穴は研修医時代はBB弾(5mmくらいのピストルの弾)。最近はビーズ。

鼻の異物でおもちゃの盛衰を知るなんて。深い(かも)。

その他、トウモロコシ、オセロの石、ただの石、消しゴム。。。などなど。

「なんで入れたの?」と聞いても子供たちはいつもまともに答えてはくれません。

バツが悪そうに黙っていたり、ただひたすら泣いたり。

きっと子供たちはダメなことはわかっている、でも鼻に物を突っ込まずにはいられない、

そんな後戻りできない何かの殻を破ろうと(なんの殻?)鼻に物をつめるのかもしれない。

だから私も深くは聞かない。

「わかっているよ。わき上がった妄想を止められなかったんだね」とつぶやく。

異物談義に耳鼻科医は盛り上がります。学生の頃、講義をする先生も時間をかけていたなあ。

試験には出ないのに。

一番想像をかき立てられたのは、”爺さんの”のど”から取り出した入れ歯が婆さんのだった”症例です。

想像するでしょう?