院長ブログ
2020.07.12
10代の脳(2)
長年同じ仕事をしていると、奇妙な症状を訴えてくる患者さんがいる。
その高校生は「音を聞くと変な気持ちになる。特に大きい音を聞くとイライラする」と来院された。
鼓膜に異物や耳垢がのっていると振動が変わり違和感があるのか?
観察してもきれいな耳だ。。。
「小さい音は聞こえにくくて、大きいと耳障りに聞こえる」という症状は良くあるから若いのに突発性難聴?
しかし、聴力は問題ない。。。
そんな一般的な考えよりも高校生ということに注目してみよう。
幼い子供は無限の可能性がある。のは脳が10歳くらいまでは
何にでもなれるように神経細胞を増やし選択肢を残しておくからで、
(野球選手?音楽家?パティシエ?学校の先生?)
思春期を迎える頃に専門化が始まる。
神経のつながりが変化し再構築し大事なところが強化される。
より専門化が進むのは成人後の社会生活には重要な反面、柔軟性がなくなる(=物覚えが悪くなる)のですが。
脳の感情と理性は同じ脳の中でも別々に発達し、感情の最盛期は思春期に当たる。
「いったい、何考えているの!」とこの時期に子供を怒った経験、怒られた経験は誰にもあるだろう。
これにホルモンも加わって、感情と理性のずれがピークになる。
Lineが既読になっているけど返事が来ないのは私が何か嫌われることをしたからか?と思い悩んだり、
いつも私からメールを送ってばかりで返事を絶対にくれない!
過去に1回くらいあったことを過度に一般化してとらえたりする。
そういう事実として起こっていることと、それをどう感じるかが歪みやすい時期が思春期なのだ。
音に感情がのるのも無理はない。
この歪みを成人期まで持ち越し、自分に向かえばうつ、不安神経症を発症しやすく
他人、家族に向かえば社会的、家庭的不適格者となりうる。どちらにしても孤独への道一直線だ。
体は15歳くらいで最盛期を迎え、理性脳の発達が完成するのは20代後半になる。
この事実でうまく商売しているのが自動車保険で、
感情が優先するブレーキの利かない脳の持ち主が運転するから26歳までは割高になっているのだ。
実はその子に診療で、こういう風にちゃんと話せたわけではない。
聴力が大丈夫なことと、心理的な影響(コロナ明け直後だった)であり、病気ではないことは伝えただけだった。
どうもその後、心に引っかかり調べてみた。
あの子が読んでくれるといいが。