院長ブログ

2021.03.31

水疱瘡(みずぼうそう)と帯状疱疹

 水疱瘡(みずぼうそう)や風疹やおたふくに、かかった時を覚えている大人は少ない。
けれど私はその数少ない大人の一人です。
だって、水疱瘡になったのが中学1年生の時だったから。
同級生の「美奈子、どうしたが!?顔ぶつぶつだよ?」に
「なぁ~ん、ニキビひどくなったが」と答えていた。
なぜなら、母親が「ニキビだよ」と言い切っていたから。
その後高熱が出て水疱瘡と判明し、金沢への遠足に行けなくて布団の中で泣いてました。

しかし、本当の不幸は遠足に行けなかったことではなく
水疱瘡にかかったことで、帯状疱疹になる可能性が生まれたことかもしれない。
そう、帯状疱疹になるにはまず水疱瘡にかかっていなければならない。
神経の中で何十年も眠っている水疱瘡のウイルスが
免疫力が下がることで、また活発にうごめく。
これが帯状疱疹です。
近所の人が帯状疱疹になったからと言って、自分が帯状疱疹になるわけではありません。
でも帯状疱疹になった人が、まだ水疱瘡になっていない子供と接すると、
その子は水疱瘡になるかもしれません。
おわかりいただけたでしょうか?
話はそれますが、欧米では”子供のころに水疱瘡はかかったほうが良い”という考えがあり
水疱瘡にかかった子を招いてパーティーを開く”水疱瘡パーティー”なるものがあるそうだ。
私も欧米に生まれていれば布団の中で泣くことはなかったかもしれない。

帯状疱疹は耳鼻科で診察することも多い。
先月には”耳が痛い”で受診された壮年期の方。
だいぶん我慢して、耳から顎までぶつぶつの状態で受診されました。
ぶつぶつが消えても痛みが残っていて、
患者さん「なんでこんなに痛いんですか?」
私「だって、病気が完全に完成された状態からの治療だったでしょう。
医師国家試験に出たって、誰も間違わないくらい完璧な帯状疱疹でしたよ」
患者さん苦笑い。。。
このエピソードのように、帯状疱疹は年をとればとるほど発症する。
学校で勉強したことも長い間で忘れるように、
免疫の記憶も長生きすると忘れてしまう。
昔みたいに、周りの子供が水疱瘡になっていると、
ウイルスへの免疫記憶が呼び起され、帯状疱疹を予防できていたが、
今はワクチンを子供に接種しているので、免疫記憶は薄れる一方だ。
実際、2014年の水疱瘡ウイルスの定期接種が始まってから、
帯状疱疹患者さんの数は増えている。
痛みで辛そうな患者さんの
「もう二度とこんな目に合わないためにはどうしたらよいですか?」
の問いには「大人も50歳過ぎたら、ワクチン打とうよ」と答えたい。
既に帯状疱疹になっていても、15%は再発するから無駄ではない。

最後に。まだ医学生だった頃、ウイルス学で軟膏薬の効果の実験は
マウスの脱毛した部分に少し傷をつけ、人為的に水疱瘡ウイルスを植える手順でした。
学生はマウスのおなかを脱毛する係で、
マウスのお腹に脱毛クリームを塗っていました。
結構きれいに、つるんつるんになるんですよこれが。
脱毛クリームってすごいな。というのが実験の思い出です。