院長ブログ

2021.04.07

北の国から87’初恋

 このブログでも何度も”ネタ"にしてきた「北の国から」の田中邦衛さんが亡くなった。
そしてフジテレビでは追悼番組として「87’初恋」が放送された。
まずあらすじを紹介させていただきたい。

北海道富良野で暮らす黒板一家(父さん五郎:田中邦衛、純:吉岡秀隆、蛍:中島朋子)。
純は年頃になり近所の同級生、れいちゃん(横山めぐみ)に恋心を抱く。
卒業したら富良野の高校に行くつもりだった純だが、恋するれいちゃんの
「東京に行ってダンサーになる。高校は定時制に通おうと思うの」という言葉に
「自分もれいちゃんと東京に行こう!」と思い始める。
純は父さんに内緒で東京のおばさん(竹下景子)と連絡を取ったり、
草太兄ちゃん(岩城滉一)に相談したり。
父さんは、純が相談してくれず、自分だけが純の東京行きを知らなかったこと、
いけ好かない男の娘に純が熱を上げていることが気に食わない。
ついにそれが父さんの誕生日という楽しみにしていた場所で爆発してしまい、
誕生パーティーは一転、暗黒の時間へ。そして!まさにその夜、
れいちゃんの家で父親が母親を誤って車でひいて死なせてしまうという事故が起きてしまう。
れいちゃんは「父さんを捨てて、東京に出る」と言っていたが、
一人娘のれいちゃんには母親がなくなった今、父親を置いて東京に出ることはためらわれ、
その気持ちを知る純も自身の東京行きをあきらかけている。
そんな状況でクリスマスイブの夜に会う約束をした二人。
れいちゃんはその前に夜逃げしてしまい会えず、
約束の場所に向かうと、そこにはれいちゃんからの手紙と尾崎豊のカセット。
そして流れるのが♪I love you~♪
どこかわからない、遠くに行ってしまった、れいちゃんと純の東京に行くという気持ち。
雪に刻まれたれいちゃんの足跡を見ながら思い出に浸っていると、そこにやってくる蛍。
そして純に無慈悲な宣告「もう東京行きの準備は父さんが全部やってくれて大丈夫だよ」。
(いや~この場でそれ言うか、、、蛍がデビルに見える)
そんなこんなで、れいちゃんのいない東京行きを決意した純。
東京に行く定期便のトラックに乗せてもらい、父さんと蛍に見送られて富良野を出る。

以上が「北の国から87’初恋」のあらすじです。
と、ここでドラマ24話、スぺシャル8話という数ある作品の中で
なぜ「87’初恋」だったのか?ということを考えてみたいのです。
追悼という意味を濃くするのなら「02’遺言」の題がしっくりくるけど、
純や蛍も大人になって人間関係も複雑になっているので、
新しい視聴者はついて来られないかもしれない。
純が不良になっている「89’帰郷」「92’巣立ち」は春休みにそぐわないし、
「95’秘密」は蛍が不倫する話が入っていることに加え、放送が198分の超長尺だから
2夜に分割しないと難しいだろう。(私個人としては分割してくれてもいいのだが)
「98’時代」でもよかったのではないの?という私の疑問に
「87’初恋」のラストシーンが答えてくれた。

東京行きのトラックに乗せてもらった純はカセットをイヤホンで聞きながら、
れいちゃんを思い出して哀しみにひたっている。
運転手(古尾谷雅人)は純のイヤホンを外し、
「親父にもらった金だが、お前がもらっとけ」とぶっきらぼうに言う。遠慮する純。
「ピン札に泥がついている。お前の親父の手についていた泥だ。お前の宝にしろ。一生とっとけ」
純が茶封筒からお金を出すと、薄く泥のついた2万円、見つめながら涙があふれる純。
ここで、さだまさしの♪あ~あ~ああああ、あ~あ~♪がイン。
富良野の街を走る映像と、純の泣き顔、さだまさしの音楽、
そして、小学生で東京から富良野に来て、住むところを3人で作っていくシーン。
蛍のキツネに石を投げて、父さんに殴られるシーン。
大地を走る幼い二人。離婚してしまった母さんを追いかける蛍。
2万円を見つめながら、そんな富良野での思い出に涙し、
2万円の泥を指でなぞりながら、父さんの苦労に優しさに胸が詰まる純。
トラックは空知川を越えて富良野を離れていく。。。終わり。

この作品の本放送は3月の末で、この時期は卒業があり、入学もあり、就職もある。
新しい生活の裏ではそれぞれの親が、
”泥のついた2万円的なもの”を子供のために準備している。
”2万円”はお金で、”泥”はそれを稼ぐときの苦労として。
入学金や自動車学校の振込用紙に泥をつけて子供に見せても、
子供は何とも思わないと思うが、巣立つまで親はヒナに
”泥のついた2万円”を与え続けるのだ。
子供は純に、親はとうさん(五郎)に投影してみられる。そういう作品だから。
というのが「なぜ87’初恋だったのか?」という問いに対する私なりの答えだ。
すべての新生活者に幸あれ!
そして、田中邦衛さんありがとうございました。