院長ブログ
2021.06.08
タコの心身問題
「この店のこの料理が好き!」ってのは誰にもある程度あると思う。
私にとってそれは”煮だこ”にあたる。
その店に行ったとする。あれば必ず注文するそんな好物が”煮だこ”なのだ。
だから先月アマゾンの自分のページを見ていたら、
あなたへのおすすめに”タコの心身問題”という本が出てきて驚いた。
”煮だこ”が好きなことは私と店主だけ(多分)が共有している秘め事である。
誰にも言っていない。なのにタコからのクレームだろうか?
ということで3000円のこの本を読んでみることにした。図書館にあったしね。
まずこの本は、タコに心があるか無いかを論じている本ではない。
スタンス的には「タコに心?あるに決まってんじゃん!」という
タコに魅了されて仕方ない”ダイバー時々哲学者”の書いた本です。
タコは無脊椎動物で、絵を書くときに丸くする私たちでいう頭に当たる部分が実は胴体で、
胴体・頭・足の順で並んでいる。頭から足が出ているイメージです。
頭足類とはよく言ったものだ。
この身体に5億個の神経細胞があるという。
これは犬並みで、無脊椎動物の中では群を抜いている個数だという。
だからタコが賢いことを示すエピソードには事欠かない。
実験のための飼育員をみんなが同じ服装にしてみても見分けるし、
気に入らないエサだと、与えた人にエサを投げつけたり、
しばらくそのエサを持って食べず、与えた人を見つめて目が合ったらゆっくり捨てるという
なんとも陰険な行動をとるらしい。
EUではタコが賢いことが認められて、”名誉脊椎動物”として扱われ、
脊椎動物並みに麻酔をかけて実験するように規制されているという。
将来、いきなりタコをゆでる鮨屋は今のクジラ漁のように
シーシェパードにやいやい言われる日が来るかもしれない。
シーシェパードにやいやい言われる日が来るかもしれない。
ちなみに実験でよく使われる動物はマウスだが、
現在はケージの中におもちゃを入れることが義務付けられているらしい。
実験マウスに対する至れり尽くせりはまだある。
順番に実験をする場合、3番目以降のマウスは何をするか察して落ちつかなくなるから、
順番に実験をする場合、3番目以降のマウスは何をするか察して落ちつかなくなるから、
後ろに控えているマウスに見えないように、鳴き声も聞こえないように進めるそうだ。
うちの病院でも、3人兄弟で来て、お兄ちゃんが耳掃除、次男坊も耳掃除となると、
三男坊の顔が徐々に恐怖でゆがんでいくことはよく経験する。
無情にもお母さんに「次はあなただからね」と宣告される前から
三男坊はもちろん気が付いているが。
人間の場合も隠さないと違反になるだろうか?
話はずいぶんずれたが、ヒトとタコ。
話はずいぶんずれたが、ヒトとタコ。
似ても似つかない両者にも共通の祖先はあった。
そこから無脊椎動物の代表として心を進化させたタコ、
脊椎動物の代表として心を進化させたヒト。
つまり自然は異なる経緯でタコの心とヒトの心という2つを作った。不思議でしょ。
そして自分(筆者)は海に潜り、タコと心を通わせ、哲学してみたよ。
がこの本に書かれていたことです。
がこの本に書かれていたことです。
タコ好きなだけじゃん!という突っ込みを入れたくなる本でした。
”煮だこ”の店主に「タコとイカ、どっちが賢いと思う?」と聞いたら。
「タコだよ。だって絞めるの苦労するもん」という
哲学者とはまた別の、これまたすっきりとした見解を教えてもらいました~
この本の原題は「others minds」(mind=思考・記憶・認知)
タコだけではなく”mind”を持つ生き物は多くいるだろう。
人間が最高位という人たちは言葉を持ってこその”mind”という。
心を表現するには言葉が必要だ。と。
しかし、言葉を持つ人間同士は分かり合えているだろうか?
諸事情により来週はブログをお休みします。
おまけ:タコを含む海洋生物の素晴らしい知恵は
David Gallo: 水中の驚き by デイビッド・ガロ | TED Talk
David Gallo: 水中の驚き by デイビッド・ガロ | TED Talk
で見ることができます。