院長ブログ
2021.07.14
続・がいじ道(耳アカ篇)
「耳そうじはやったほうがいい?そしてどうやってやるのがいいんですか?」
診療していて一番よく聞かれるこの質問の答えを今回は考えてみよう!
耳アカは生涯変わらない自分の特徴である。
しかし、そんなにたくさんの種類があるわけでもない。
茶色っぽいアメ状の湿った耳アカ(ウエット型)と
カサカサした乾燥した耳アカ(ドライ型)の二つに分けられる。
耳アカの型は、人種的に特徴があることでも知られ、
アフリカを代表する黒人はほぼ100%がウエット型、
ヨーロッパを代表する白人は90%以上がウエット型、
アジアの黄色人種、中国、韓国は80%以上がドライ型である。
人類が初めてこの世界に現れた場所はアフリカで、一部は新天地を求めて
ヨーロッパやアジアの広い範囲に進出しそこで住み着いたことを考えると
最初の人類の耳アカはウエット型だったと考えられる。
アフリカのサバンナで自分の背丈ほどの草の中を歩くには、
虫や草が入らないように、ウエット型であることは利点があったのだろう。
アジアに移り住んだ者の中で突然変異が起こりドライ型が誕生した。
寒ければ虫も少ないし、身近に生える植物も異なるからウエット型である必要がなくなったのだろうか?
それとも、ドライ型に何らかの利点があったのだろうか?
さて、日本人はというと他の黄色人種と同様、ドライ型が80%以上である。
しかし、同じ日本人でも昔のアイヌの人たちは87%がウエット型であり、
琉球人でもウエット型の頻度が本土の人より多いことが知られている。
こういう耳アカの分布から、現在の日本人には3つ人種の起源があるようだ。
ちなみにインディアンは黄色人種と同じで80%以上がドライ型だそうだ。
アジアからアラスカを渡って、アメリカ大陸に住み着いた黄色人種がインディアンなのだろうか。耳アカ一つで世界大陸を横断してしまい、ずいぶん前置きが長くなったが
まず”自分の耳アカを知ろう!”ということである。
耳アカの型を知れば、それを掃除する道具が見えてくる。
大人の場合、ウエット型では綿棒が良いのではないだろうか?
ドライ型では古典的な耳かきが良いと思う。
しかし、どちらの場合も軟骨部外耳道(入口から1cmほど)だけを掃除するつもりで道具を奥に入れない。
そして、道具で耳垢を押し込まないことが肝要だと思われる。
次に、耳そうじの目的を初心にかえり考えてみたい。だって、”がいじ道”だもの。
耳鼻科に来て中耳炎と判明することも多い。
鼓膜に穴が開いた場合は数回受診することになってしまう。
ここで、高齢者の耳そうじについて言及したい。
認知症の方や施設に入っている方の外耳道が耳アカでふさがっていることはよく経験する。
高齢者の認知機能と耳アカの関係を調べたところ
外耳道をふさぐほどの耳アカがあると認知機能の低下がみられるという。
耳アカのせいで聞こえにくくなる⇒コミュニケーションの低下⇒認知の悪化
という悪循環が原因だ。
家族が「あれっ?」と思ったり、介護になる前には
一度耳鼻科で耳アカのチェックを受けてはどうかと思う。
耳鼻科での耳そうじで認知症を遅らせることができたら、
それはとてもメリットがあることではないだろうか?
さて、外耳道の存在は気持ちよくなるためにあるのではないが、