院長ブログ

2021.11.28

進化医学

”ダーウィンが来た!”でおなじみチャールズ・ダーウィンの”種の起源”が出版されたのは1859年11月24日。
それまでの「神様が天地を創造して、生き物を完璧に作った」という考えを覆し、
「生き物は世代を経て進化している」という進化論を証明した本だ。
チワワを飼っている人なら同じチワワでも一匹一匹違う特徴があることがわかるだろう。
”目がたれている”のもいれば”目がたれていない”もいる。
ここで人間のニーズが”目がたれている”にあると、もし自分がブリーダーなら
”目がたれている”同士を交配させ、”目がたれている”特徴を際立たせようとするだろう。
自然界でも同じ様なことが起きている。
例えば木の中から虫を捕る鳥の中で、クチバシがちょっと長い子が生まれた(としよう)。
そのクチバシが長い子は他の短い子と比べ、より深いところにいる虫を捕まえて食べることができる。
すると丈夫な体に成長し、縄張りをめぐる生存競争に勝つし、メスにもモテるだろう。
そうするとこの”くちばしが長い”という特徴が代々受け継がれ、
それまでの主流であったくちばしが短い子は淘汰され(自然淘汰)いなくなる。
そして、クチバシが長い鳥が自然界に残ることになる。
と、いうのがダーウィンの進化論です。
日本ではこの進化論は大体納得しているそうだ。
それに対し、キリスト教の国アメリカでは6割の人が”神がすべてを作った”と信じ、
ダーウィンの進化論は4割しか信じていないそうだ。
けれど、「生存に適しないものは自然淘汰され、適したものが生き残る」を”逆”に解釈して、
「生き残っているものこそ、適している」という社会的進化論が好きな国なのにね。
こういう話を耳にすると、私は高校時代に数学で習った”逆・裏・対偶”を思い出します。
自分のTシャツを前後に着て”逆”を、裏返しに着て”裏”を、
前後逆にし、さらに裏返しに着て”対偶”を理解しようとしていました。
そんなふうに勉強したからか「逆も裏は必ずしも真ではない。ある命題が真なら対偶は真になる」は覚えています。
適者生存の対偶は「生き残れなかったものは、生存に適していなかった」です。
そうみると、世の中には簡単に”逆”を”真”として主張することが多いかもしれませんね。

(図書館にありますよ)
もともと”種の起源”を読んでみよう(漫画だけど)と思ったのは
製薬会社さんに頼まれて講義をしているうちに、
「ある薬が生まれ、消えていくことにも自然淘汰的な何かがあるのだろうか?」
と、考えたから。製品にも進化や淘汰が応用できるかもと読んでみたのです。
ある程度の形にするには各薬剤の誕生から、生きていれば現在までの売り上げや
開発目的は絶対、できれば開発秘話も必要だな。調べる資料が多すぎるな。
とボツにしましたけど。
話はだいぶんそれましたが、毎日”病気”を見ていると
「人も進化による生物なら、病気は何のためにあるのだろう?」と不思議に感じます。
”病気”を欠陥としてみなすのではなく、その裏に隠された利点もあり、
それに気づくことで診療の助けにならないだろうか?
この進化医学という分野に入る入場券が”種の起源”だったのです。
(続く)