院長ブログ

2022.01.12

読む禁煙外来(前篇)

いつも通っている道沿いに新しいカフェができたとしよう。
女友達を誘ってその店で、できたてのコーヒーとシナモンロールを食べる自分を想像するとワクワクしないだろうか?
あるいは付き合っている人の部屋に初めて行ったときに、そこに”カクテルを作る道具”なんかが置いてあって「なんて、オシャレなの」と心がとろけた経験はないだろうか?
この時脳の中では”ドーパミン”が爆発している。
過去のブログでも”ドーパミン”+依存症について話題にしてきたが、
(依存症カテゴリーにまとめました)
"快楽”という一面だけでとらえていて、”ドーパミン”を語るには足りていなかった。と思う。
快楽だけではない。”ドーパミン”の反応は可能性や期待を感じたときに高まるのだ。
新しいカフェは今までとは違う日常を演出してくれたので”ドーパミン”が出る。
けれど数か月もすれば、その店を見てもワクワクしなくなる。だって可能性や期待がなくなったから。
恋人の意外な面に”ドーパミン”が出て、この胸のときめきは一生続くと結婚しても5年経ったらどうだろうか?
恋人時代ほどは”ドーパミン”は出ていないはずである。
だからと言って、”ドーパミン”を出すために結婚相手をとっかえひっかえはできない。
しかし、この世の中には”ドーパミン”を出すために次々と新しいものに手を出す人がいる。
それが喫煙者=ニコチン依存症だ。

ニコチンは衝動的な使用を起こす以外は何もない薬物ではないだろうか。アルコールと比較しても酔っ払いもしなければハイになるわけでもない。
”ドーパミン”を出しはするが、すぐ切れてしまうので次から次へと体に入れたくなる。
タバコを吸うとリラックスし頭が冴えるというが、それれはニコチンの渇望から解放されただけで
「苦しみから解放されたいから苦しむ」という、いびつな構造に見える。
そんなニコチン依存症の方に禁煙外来を当院は行っていたのだが、
ニコチン欠乏のイライラを抑える禁煙補助薬=ニコチネルも、ニコチンが”ドーパミン”を出すことをブロックする飲み薬=チャンピックスも現在は流通してなくて、禁煙外来は開店休業状態である。
「禁煙したいんですよね~」と外来で聞くたびに胸が痛んだ。しかし!必要は発明の母とはよく言ったもので、読んで禁煙できないだろうか?と考えた次第です。
と、いうことで次回は薬を使わない(使えないので。。。)禁煙法について書きたいと思います。
禁煙だけでなく、依存症全般(ダイエットだって、スマホだって)に使えるように考えてみましょう。