院長ブログ

2023.09.06

発熱から学んだこと

7月の終わりから増えている”発熱”は相変わらず私にその問題を解くことを求めている。コロナ、インフルエンザ、カゼ、その他いろいろなどなど。そんな今を、どうやら9波というらしい。

病院でもぽつぽつとコロナの陽性者が出始めていた3波の頃、高校生が発熱で受診した。コロナは陰性だったので解熱剤で様子を見たが、翌日も解熱せず頭痛があるという。総合病院の内科に紹介して、まあ何かしら解決するだろうと思っていたが、2日後また当院を受診された。総合病院ではコロナではなく、そこから紹介された内科では「膠原病かもしれないから、もう一度耳鼻科に行って膠原病科に紹介してもらったほうが良い」と言われたとのことで受診されたのだった。
一目で最初よりは状態が悪く、もう私とちゃんとした会話も難しい。親御さんに聞くと、解熱鎮痛剤では頭痛も治まらず、嘔吐もしているという。病状は切迫している。でも具体的な病気が思いつかない。以前勤めていた病院に、ここ数日の経過を書いて相談したら、その日の午後に担当の先生から電話が来た。「ウイルス性の髄膜炎だったよ」その言葉聞いたときの私の顔写真が残っていれば、きっと顔から火が出ていたに違いない。
国家試験に「発熱、頭痛、嘔吐の症状~」と書かれていれば、「髄膜炎」に〇をつけていた。学生の時の自分以下の診断能力だったのは、コロナありきの先入観が診断の精度を曇らせたのだと思う。
発熱外来では、コロナで陽性が出た方がシンプルだ。陰性と出た場合は、では何?という次の問いが生まれる。発熱の問題を解くカギを得ようとすればするほど、耳鼻科は耳、鼻、のどといった”穴”を通して身体の中を覗き込まなければならず、それはすなわち自分の感染の確率が上がることを意味する。自分の健康が脅かされると感じていて、冷静になれる人間は少ない。
冷静になれずに先入観を持っている頭では問題は解けない。
それから約3年間、発熱について考え、正解という的に命中するための技術は高まったとは思う。コロナの症状も死の病ではなくインフルとさほど変わらなくなり、感染しても5日間の療養になったので、感染によって失うものが少なくなり、冷静に考えられるようになったからだと思う。

恐怖心をなくす一番は自分が感染してしまうことだと思うが、私はまだ感染していない。こんなに接しているのに、シールドだってガウンだって着けていないのに、なんなら病院の中でのどを見てからコロナの検査して陽性とわかる人もいるのに、なんで?
という、発熱の問題を解くにあたって邪魔になる雑念を追い払うために、コロナのN抗体(ざっくり書くと、感染した人は陽性になる)を調べてみることにした。これでN抗体を持っていたら。。。無双だなあ。


N抗体は陰性でした。。。と言うことでショックでもないのですが、ブログはちょっとお休みします。