院長ブログ

2023.12.20

7年ぶり

「何かが身体に入ってきた」
こんな感覚は久しぶりだ。どうやら、そいつはのどに居座るつもりらしく、時間が経つにつれてのどの痛みが増して、のどに心臓があるみたいにドクドクしてきた。私の血液はのどへの来訪者に歓迎のあいさつをするためにそっちに流れているのだろう。その分、いつもはホットフラッシュ気味の手足が心なしか冷えている。立場上、コロナとインフルエンザの検査をしてみたが二つとも陰性で、日記で確かめると風邪をひくのは7年ぶりだった。
「面白い」
オリンピックの4年より長い、7年ぶりのことを利用しない手はない。
まずは医者の私が患者の私を診る。表の私が裏の私に尋ねる。「何をしたら特にのどが痛い?」
しゃべると痛いのか、食べると痛いのか、どっちも痛いけど、どっちがより痛いのか?表の私はこの質問でより感染にFOCUSしようとするが、裏の私は表の私に、とにかく早く治ることを要求する。表の私の風邪への扱いと、裏の患者の都合が葛藤するけれど、結局は安い独りの芝居だ。患者の私には仕事があり、ここ最近は同じ症状の人を多く診察する。同じ患者同士のあるある”を語りたいのだが、余計な会話は残っている体力を消耗させるので、できるだけシンプルな会話を選ぶ。調子が悪い中の診療では自分の体力が限られるので、余分のことが削ぎ落されるのだ。予約の患者さんの数に私のエネルギーを分散させなければならない。
トライアスロンという競技を知っている人はいるだろうか?水泳、自転車、マラソンの3つをこなす耐久競技で私は大学時代この体力勝負のスポーツにはまっていた。最後のマラソンでゴールするためには水泳と自転車でエネルギーを枯渇するわけにはいかない。もっと細かく考えると自転車やマラソンで使うのは主に足だから、水泳で足を使い過ぎてはいけない。その代わり自転車もマラソンも、腕はあまり使わないから水泳はできるだけ腕を使う。限られた体力をどう分散させ、止まらずにゴールできるのか?体調が悪い中の診療はトライアスロンに似ていると思った。
結局、診療もリタイアすることなく完走した。
この不調から学んだこともある。目減りする体力の有効活用だけでなく、のどの痛みはのどの身体への役割も実感できた。そう、いつだって、失ったものがあったものを雄弁に語ってくれる。私は健康を失って、健康のなんたるかを知ったのだった。(たった3日間だけど。。。)
健康はもちろんだが、大切なものを永遠に失ってしまっては、それに気が付いたって遅い。
これは健康だけでなく、いろいろなことに応用されないだろうか?
今回の風邪で一番学んだことは、”学べるうちはまだ許されている”。ということになるのだろう。


というわけで、今年の(ちゃんとした)ブログはこれで最後です。
皆さんよいお年を。