院長ブログ

2024.10.02

インベスターM

アイツは私の心の片隅にあって、まるでシューズに入った小石のように地味ぃ~に私を6年間苦しめ続けていた。そのアイツと遂に別れることができる!
アイツとの出会ったのは東京オリンピックに向けて世の中が盛り上がりを見せている頃だった。オリンピックという4年に一度の祭りを逃す手は無い!参加しよう!チケットはなかなか当たらないから別の参加の仕方は無いか?オリンピックが開催されるとどんな東京になるかを想像してみた。
オリンピックが開かれる→東京に外国人があふれる→外国人(日本人も)はゴミをたくさん出す→清掃業者フル活躍→清掃業者の業績アップ!ピン!清掃会社の株を買うことで、オリンピックに参加しよう!と閃き、アイツ、つまりとある会社の株を私の証券口座に招待したのだった。
今思えば、私もオリンピックで浮かれていて脳内がお花畑になっていたのだろう。完全に自分の”風吹けば桶屋が儲かる”ロジック=”オリンピックで外国人が来てゴミがあふれる”に酔っていて、明るい未来しか見えていなかった。
その後の世の中は皆さんもご存じだろう。コロナがまん延し、世界的に株は下がった。株を買った前提のオリンピックも延期され東京が外国人であふれることは無くなった。ステイ・ホームのごみの量じゃたかが知れていたよ。外国人はコロナビール一人1ダースは飲むからね!!
ベテランの投資家なら”損切り”をして出血を最小限に食い止めるのだろうが、何せ当時私はまだ初心者。「私の株だけ重力場が違う?」と思うほどあれよ、これよ、という間に下がっていったので金縛りになり、何もできなかった。その時以来、アイツは私の証券口座のアプリの中で安定の緑色(含み損中を表す色)で居座り続けた。6年間も。もうね、ちょっとやそっとの損ならビクともしなくなっていましたよ。
そのアイツが9月に入ってちょっと変化してきた。手術室のモニターなら心停止みたいな株価のチャートだったが、鼓動を打ち始めた。別に心臓マッサージもしていなそうだけど。ずっと緑色を見続けてきたからか連日の株価上昇にメンタルが慣れ切っていない。疑うことしたできない心には、アイツが6年かけてまっとうに生まれ変わったとは思えず、買い増しなんかしたら、また死に向かうゾンビ株のようにしか思えず売ってしまった。やっとシューズから小石が出て行ったよ。6年間、1年生から6年生になる時間一緒にいて、2600円儲かっただけだった。まぁ、旧NISA口座だったのでちょびっと得した気分だったけど。

こんなふうに病院では赤裸々に私の投資生活について話している。病院で株部を作りたい!と思っているくらいだ。私という失敗の権化に安心し、若いスタッフも興味は持ってくれているようだ。彼女たちが今の私くらいになって投資始めていてよかったな。と思ってくれたらありがたい。
こんな私だが、絶対、損したくない!というスタッフにはアドバイスを求められたら「インデックス投資を長期間で」と答えている。私にはない絶対的な時間という資産が彼女たちにはあるのだから。ただ、個別株のロマンを味わいたい気持ちもあるのか、最近になって証券口座を開いたスタッフは私に「株で損してなんかいいことあんの?」と、半ば呆れて聞いてきた。私は人生の先輩として堂々と答えよう。
まず、思い出ができる!(ブログのネタにもなったしね)
次に、マイナスをマイナスのまま受け入れる。毎日含み損を見ても動じないメンタルが育成される。これはメンタルトレーニングになる!
最後に、本業を頑張ろうと思える!
「・・・」返事はなかった。