院長ブログ

2024.11.24

のど百景

のど=咽頭(いんとう)は単純に上から上中下の三つの部分に分かれていて、上咽頭は空気を、中咽頭は空気と食べ物、下咽頭は食べ物を通している。と書いた以前の上咽頭のブログに続き、今回は中咽頭を考えてみたい。
中咽頭とはどこ?と不安になる必要はない。誰しも、自分の”のど”を見てもらう時に口を開けるだろう。そう、口を開けて見える部分がまんま中咽頭と思ってもらえばいい。”のど”オブ”のど”にあたりますな。
(参考までに私の中咽頭、大人なので扁桃がほとんど見えない)
この中咽頭を診察しにくくする、営業妨害№1が”舌”である。レロレロと動く部分だけが舌ではないことは、コストコの牛タンブロックを見れば理解してもらえるだろう。牛の場合、細い人の腕くらいの大きさはある。そして、牛タンを食べるとこれまた理解してもらえると思うが、舌は筋肉の塊でもある。最近のどの診察の時に、舌を前に出す人が増えているが、こうされるとボリュームある舌の付け根部分が前に出てくる+舌に力が入っているので舌圧子(舌を抑える金属の棒)が利かない。という2つの欠点から中咽頭が見えにくくなる。
№2はオエェという嚥下反射で、鋭い人から鈍い人まで個人差があり、反射なので自分ではコントロールできない。診察する側からしたら、オエェの瞬間には軟口蓋が上がり、舌が下がるので中咽頭を見るには絶好のタイミングなので、嚥下反射が強い人の診察はこの一瞬が勝負である!と思っている。
さて、中咽頭にある代表的なものは”扁桃”であろう。
親は子に大きく育ってくれ!と願わずにはいられないと思うが、大きくは育ってほしくないのが”扁桃”である。扁桃は大きすぎると健康を損なう。私が今まで経験した一番印象に残る5歳の子の訴えは「息苦しくて階段が登れない」です。

(手術前は大きい扁桃がのどの空間を占めている。と手術後)
退院後は「2段飛びで登れる!」様になりました。
また扁桃は免疫を担当する部署であるから病原体と戦っている。そして戦い敗れると、
と、このように扁桃が変化する。答えから先に書くと向かって右から”溶連菌性扁桃炎”、”ただの扁桃炎”、”ウイルス性扁桃炎(伝染性単核球症)”である。
それぞれ扁桃が出すサイン、つまり見え方が違うので耳鼻科医ならばなんとなくあたりは付けられる。もちろん見た目以外にも体温、首のリンパ節の腫れている位置などなどを総合して答えを出すのは言うまでもない。
さて、写真の真ん中、”ただの扁桃炎”でもこれを繰り返していると、”習慣性扁桃炎”というワンランク上の病名が与えられる。免疫担当のくせに、病原体とズブズブの関係になっている状態だ。これを患者さんがイメージしやすいように「病気のたまり場になってしまったよ」と説明しているが、そんな時は必ず金八先生第2シリーズでの暴走族のたまり場=スナックZを思い浮かべています。
扁桃炎が悪化すると”扁桃周囲炎”さらに悪化すると”扁桃周囲炎”になる。まるでドラクエでラスボスが形態を変えるように。
(矢印の場所が膿がたまって腫れている。前の3枚と比べると腫れ具合が歪んでいる)
扁桃周囲膿瘍になると、飲み薬だけでは決して治らない。第3形態くらいのラスボスに”メラ”で攻撃するようなものだ。入院できる病院でミナデインだ!